都市化と花粉症の関係性

 

都市と地方の大きな違い、それは地面の違いからくる花粉にさらされやすい環境と、からだの中で花粉症を悪化させる大気汚染物質。

 

これら2つの異なる原因によって、森林等の花粉の発生源から離れている都市部においても花粉症を発症する人が増えているのです。

都市部のほうが地方より花粉症患者が少ない?

 

花粉症はその原因物質がスギやヒノキをはじめとした植物の花粉であることから、都市部よりもそれらの植生に近い地方に多いという印象をしばしば持たれがちです。

 

しかし、実際にはスギがほとんど植えられておらず、また他県と隔離されている北海道や沖縄といった一部の例外を除いて、都市部と地方との間で明らかな違いは見られません。

 

このことについては花粉が風に乗って遠くまで飛ぶことに加え、都市部に特有の原因も関係していると考えられています。

花粉症と都市環境

 

その原因のうちの一つは都市の整ったインフラ環境から来るものです。

 

インフラ環境の整った都市

開発の手が及んでおらず土の地面が多い地方と比べ、都市部ではあらゆる地面が舗装されてアスファルトやコンクリートで覆われています。

 

この地面の違いが都市部において一度飛散した花粉が長期間に渡って浮遊しやすい状況を作る原因になっています。

舗装の特徴

 

この二者の違いを生んでいるのは水分の保持力です。

 

それ自身が一つのかたまりとみなせるコンクリートやアスファルトは水分の侵入を許しませんが、土は小さな粒の集まりであるために粒と粒の間にある空間に水分を溜め込むことができるのです。

 

例えば真夏の太陽の下で裸足で歩いたとします。

 

土の上では普通に歩くことできますが、これがアスファルトやコンクリートでは熱くてそういうわけにはいきません。

 

これは土が気化熱の大きい水を適度に含んでいるからです。

 

土に含まれる水分が日光の熱によって蒸発する際に、同じく日光で暖められた土から熱を奪うことによって土の温度上昇が緩やかになるのです。

 

最近は夏の街中で掛け水をする光景も見られますが、これはアスファルトやコンクリートが水分を含んでいないことの裏返しでもあるのです。

非常に重要な花粉と水分の関係

 

この水分と花粉のような粒子状の物質との関係は非常に重要です。

 

もしあなたが料理をする際、誤って材料の小麦粉を床にばら撒いてしまったとします。

 

その時、乾いた雑巾よりも水で湿らせた雑巾で拭いた方が片付けがしやすいことは容易に想像がつきます。

 

同様に常に一定の水分を保持している土は、花粉が落ちてきてもその水分によってある程度の吸着ができますが、アスファルトやコンクリートで出来ている地面の上では、隙間を持たない表面形状も相まって、風が吹けばまたすぐに花粉が空気中へ舞い上がってしまうのです。

 

また、鉱山の採掘作業や建物の解体工事のような大量の粉じんが舞い上がることが予想される現場では、その対策で事前に水を撒くことが挙げられます。

 

しかし、花粉症対策として街中に散水することは現実的ではありませんし、例え雨が降ったとしても、アスファルトやコンクリートの中にまで水分が浸透することはなく整備された排水溝の方へ流れてしまいます。

 

そして気化熱の大きい水自身が流れてしまったことで、翌日の晴れの日には地面はすぐに暖められすっかり乾ききってしまうのです。

 

加えて、暖められた地面は上昇気流を発生させやすく、このこともまた花粉を再び舞い上がらせる原因になってしまいます。

 

このようにして、舗装された地面の多い都市部においては花粉が浮遊しやすい状況が作られてしまっているのです。

花粉症と大気汚染

 

そしてもう一つの原因に挙げられるのが都市の活発な経済活動に起因するものです。

 

都市部では種々の大気汚染物質に悩まされることも多いですが、その中の一つであるDEPが花粉症の症状の悪化に関係しています。

大気汚染物質のひとつであるDEP

 

DEPはディーゼル排気微粒子の略語で、その名前が示す通り、トラックやバス等で使われるディーゼル機関の排気ガスに由来しています。

 

一般乗用車に用いられている、気化しやすいガソリンを使うエンジンとは異なり、主に軽油や重油が使われるそれは構造上不完全燃焼が起こりやすく、そのことによって多くの有害物質が生成されてしまいます。

 

石油や石炭をはじめとした燃料の多くは炭素と水素を主な成分としています。

 

炭素や水素は十分な酸素と温度によって完全に燃えるとそれぞれ二酸化炭素と水になります。

 

ですが、酸素が不足したり、温度が不十分だったりすると、燃焼過程における熱分解などが中途半端なものとなる一方で、新たに種々の物質が結びついて毒性の高い物質が合成されてしまうことがあるのです。

 

ちなみに学校にある焼却炉が現在使われていないのは、不完全燃焼によって発生してしまうダイオキシン等が過去に問題になったためです。

 

また、近年報道等でにわかに注目を集めている言葉でPM2.5というものがありますが、これは空気中に舞っている物質のうち、大きさが2.5マイクロメートル以下のものを指す言葉で、その範疇(はんちゅう)には無論大部分のDEPが含まれています。

小さくなるほど健康へ及ぼす影響も深まるDEPの大きさ

 

このDEPの大きさは、小さいものでは0.05マイクロメートルのものもあり、より小さくなるほど健康へ及ぼす影響も深まります。

 

私たちが呼吸をする際に空気は鼻から気道を経て肺へ到達しますが、この時、粒子の大きさが小さくなるにつれて呼気と一緒に肺の内部にまで侵入しやすくなり、更にはその後の毒性も高くなるのです。

 

これは同じ重さの固形石けんと粉石けんでは後者の方が水に溶けやすいように、種類や総重量が同じでも一つ一つの粒子が小さいほど、私たちのからだの部分と触れる面積が大きくなることによって毒性が高くなってしまうのです。

花粉症を悪化させるDEP

 

その毒性は主に肺をはじめとした呼吸器系の疾患を引き起こしますが、花粉症を悪化させる要因としても作用します。

 

まずDEPが鼻の粘膜や目の結膜といった、それら自身が持つ水分によって吸着及び浸透しやすい所に取り付いてその部分を傷つけます。

 

そして傷がついた箇所では花粉を含む外部からの異物に対して過敏に反応してしまうようになります。

 

これは乾燥等で皮脂膜のバリアがはがれた皮膚が湿疹やかゆみが起こりやすくなる状態になることと非常によく似ています。

 

次に花粉症はマクロファージという細胞が抗原である花粉を取り込みヘルパーT細胞へその情報を伝えることから始まりますが、このときに花粉と同じくからだにとって異物であるDEPを取り込んでいると、出発点である情報の伝達がより活発になります。

 

その結果、花粉症の症状を悪化させてしまうのです。